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大阪地方裁判所 昭和60年(ワ)6571号 判決

原告

浜西孝一

右訴訟代理人弁護士

永楽利平

川崎全司

被告

丸実商事株式会社

右代表者代表取締役

奥文雄

右訴訟代理人弁護士

中武靖夫

瀬戸康富

主文

原告と被告との間で、別紙債務目録記載の債務は、その一のうちの金五二万二四一五円及びこれに対する昭和六〇年五月一八日から支払ずみまで年一割五分の割合による金員を超えて存在しないことを確認する。

原告のその余の請求を棄却する。

訴訟費用は、これを二分し、その一を原告の、その余を被告の各負担とする。

事実

第一  申立

一  原告

1  原告と被告との間で、別紙債務目録記載の債務が存在しないことを確認する。

2  被告は、原告に対し、別紙物件目録一、二記載の不動産についてされた別紙登記目録一ないし三記載の各登記の抹消登記手続をせよ。

二  被告

1  原告の請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

第二  主張

一  原告の請求原因

1  原告は、別紙物件目録一、二記載の土地建物(以下、あわせて「本件物件」という。)を所有している。

2  原告は、昭和五六年九月七日、被告に対し、原告が被告から継続的に金銭の借入れを行うについて、本件物件を次の(1)ないし(3)のとおり担保に供する旨約し、同月八日、本件物件について別紙登記目録一ないし三の各登記(以下、あわせて「本件各登記」という。)を経由した。

(1) 代物弁済予約による仮登記担保権の設定

原被告間の継続的金銭消費貸借取引によつて生じる被告の原告に対する貸付金元金、利息、損害金債権を被担保債権とする。

(2) 根抵当権の設定

極度額は五〇〇万円。被担保債権の範囲は、被告の原告に対する金銭消費貸借取引、証書貸付取引、手形貸付取引、手形割引取引、手形債権、小切手債権とする。確定期日の定めなし。

(3) 停止条件付賃借権の設定

(2)の根抵当権の確定債権の債務不履行を停止条件とする。

3  原告は、被告から金銭の借入れを継続したが、昭和五七年一月以降の借入れは、別紙消費貸借一覧表1ないし33記載のとおりであり、借入日欄記載の日に元金欄記載の金額を、弁済日欄記載の弁済期日に、弁済額(A)欄記載の金額を元利金返済額として弁済する旨の約のもとに、借受けた。

4  原告は、右一覧表1ないし31の各借受金につき、約定の弁済期日に約定の元利金の弁済をした。右弁済額のうち利息の部分はいずれも利息制限法所定の制限利率を超えているので、同制限利率による利息額(右一覧表の法定利息金額(B)欄)を超える部分を元本の弁済に充当すると、原告は右各借受金につき過払いをしていることになる。その過払額の合計は二四一万七三七六円である。被告は同金額を不当利得しているものである。

5  右一覧表32、33の各借受金別紙債務目録一、二記載の各借受金については、決済が未了であるが、32の借受金については一部弁済ずみであるので、その弁済分について前同様利息制限法所定の制限利率を超えて支払つた利息部分を元本の弁済に充当すると、その残元本は一〇〇万四四三二円となり、これに同制限利率による昭和六〇年五月一七日現在の利息一万二三八三円を加えた一〇一万六八一五円が、右同日における32の借受金の残元利金債務となる。また、33の借受金は、元金一六九万六五一〇円全額が未決済であり、これに右制限利率による右同日現在の利息三万三四六五円を加えた一七二万九九七五円が、右同日における同借受金の残元利金債務となる。結局、右各元利金の合計二七四万六七九〇円が、右昭和六〇年五月一七日において、原告が被告に負担している借受金債務の元利金の合計額である。

6  そこで、原告は、被告に対し、右昭和六〇年五月一七日、前記4の過払いによる不当利得金請求債権二四一万七三七六円と右5の借受金残債務二七四万六七九〇円とを対当額で相殺する旨の意思表示をするとともに、相殺後の原告の残債務三二万九四一四円につき被告に対して口頭で弁済の提供をしたが、被告はその受領を拒絶した。そこで、原告は、昭和六〇年七月二五日、右金額を大阪法務局に供託した。

これにより、原告の被告に対する右一覧表32、33の借受金債務すなわち別紙債務目録一、二記載の債務は全部消滅した。

7  原告は、被告に対し、訴状によつて、原被告間の継続的取引を解約する旨告知し、かつ本件物件についての根抵当権の確定請求をした。

8  以上のとおり、原告の被告に対する借受金債務はすべて消滅しており、かつ他に前記2(1)ないし(3)の被担保債務は存在しないので、原告は、被告との間で別紙債務目録記載の債務(前記一覧表32、33の債務)の不存在確認を求め、かつ被告に対して本件各登記の抹消登記手続をすることを求める。

二  被告の答弁

1  請求原因1の事実は認める。

2  同2の事実は認める。ただし、原被告間の取引は、継続的金銭消費貸借契約に限定されず、かつ(1)の仮登記担保権の被担保債権も継続的金銭消費貸借契約から生じる債権に限定されない。

3  同3の事実は否認する。ただし、別紙消費貸借一覧表の借入日欄記載の日時に、被告が原告から、弁済額(A)欄記載の額面金額で、弁済日欄記載の日時を支払日とする手形、小切手を、元金欄記載の金額で買入れて同金額を原告に交付したことはある。

4  同4の事実は否認する。ただし、被告が右買入れをした右一覧表1ないし31の手形、小切手は、各支払日に決済された。

5  同5の事実は否認する。ただし、右一覧表32の小切手のうち金額二〇万円のもの三通が決済された。

6  同6のうち、原告がその主張のとおり相殺の意思表示及び供託をしたことは認め、その余の事実は否認する。

三  被告の主張

1  原被告間の取引は、すべて、手形、小切手の売買であつて、利息制限法の規定は適用されない。

被告は、原告に対し、原告において未決済の手形、小切手金債権計三三〇万円を有している。

2  かりに原被告間の取引が金銭消費貸借であるとしても、貸金業の規制等に関する法律(以下、貸金業法と略することがある。)施行後である昭和五八年一一月一日以降に契約を締結した分、すなわち右一覧表16ないし33の分については、原告のした利息の支払について利息制限法の規定は適用されない。

すなわち、被告は、登録をした貸金業者であり、契約締結にあたり契約条件を明示した貸金業法一七条所定の書面(甲第一六ないし第三三号証)を原告に交付している(右書面は手形売買書という表題が付されているが、これは、原被告間の取引が手形割引の形式で行われたからであり、同書面に同条所定の要件はすべて明示されている。)。また、同法一八条所定の受取証書は、原告が被告に交付した手形、小切手を決済することにより右取引上の各債務の弁済をすることになつており、要するに被告の銀行預金口座に対する払込み(同条二項)の方法で弁済することとされているのであるから、同条二項により、原告から請求をうけない限り、被告において原告にこれ(受取証書)を交付することを要しないものであり、かつ、銀行において支払済の認証をされて原告に返戻される手形、小切手が同条所定の受取証書となるともいえる。したがつて、右16ないし33の取引についてした原告の弁済は、利息制限法所定の制限利率を超える利息の支払部分も、貸金業法四三条にいう有効な利息の債務の弁済とみなされるべきものである。

その結果、被告は、原告に対し、右1の三三〇万円から右一覧表1ないし15の過払金一〇四万二五四二円を控除した残額二二五万七四五八円の手形、小切手金債権をなお有しているものである。

四  被告の主張に対する原告の反論

1  被告の三1の主張は争う。原被告間の取引は金銭消費貸借である。

2  同2の主張も争う。

被告が金融業者として登録をしたのは、昭和五九年一月一〇日であるから、それまでの取引について貸金業法四三条の適用は問題にならない。

原告は、被告に対する借受金債務を、被告に交付した原告振出の手形、小切手の額面金額相当の金額を原告の預金口座に入金し、被告の取立によつて弁済したものであるが(第三者振出の手形、小切手による一覧表29、30、31の債務を除く。)、その場合には、原告において、弁済額の一部を利息として支払うという指定をしておらず、また、このような弁済の一部を利息として支払つたと推定する根拠もまつたくない。

さらに、原被告間の取引においては、同法一七条所定の書面も交付されず(被告から交付された書面は同条所定の金銭の貸付に関する書面に該当しない。)、かつ同法一八条所定の書面も交付されていない。借受金債務弁済の方法として、これを原因として振出した手形、小切手を決済する、という本件のような場合は、同条二項にいう預金または貯金の口座に対する払込みの方法による弁済の場合にはあたらないし、それにあたると否とを問わず、同法四三条のいわゆるみなし弁済の規定は、同法一八条(一項)所定の受取証書が交付された場合に限つて適用されるものである。

したがつて、いずれにしても、原告のした弁済額の一部が同法四三条にいう有効な利息の債務の弁済とみなされることはない。

第三  証拠〈省略〉

理由

一請求原因1(原告の本件物件所有)及び同2(原被告の継続的取引契約締結と本件物件の担保提供及び本件仮登記経由)の各事実は、当事者間に争いがない。

ただし、〈証拠〉を合わせると、原被告間に締結された継続的取引契約において約定された取引は、手形小切手の割引の形式による取引であり、具体的には、金銭消費貸借(すなわち実質的には手形小切手による貸付)と手形小切手の売買の双方を含むものであることが認められ、これを覆すに足りるほどの証拠はない。

二原告主張の金銭消費貸借によるものか、被告主張の手形小切手の売買によるものかはともかくとして、原告が被告に別紙消費貸借一覧表の借入日欄記載の日時に弁済額(A)欄記載の額面金額で弁済日欄記載の日時を支払日とする手形小切手を交付して、被告から同表元金欄記載の金額の交付をうけたことは、当事者間に争いがない。

右各事実と、〈証拠〉を合わせると、次の事実が認められる。

原告は、もと建築設計事務所を経営していたが、昭和五三、四年ごろ、取引先の酒谷某から金融業を営む被告を紹介され、それ以降に何回かにわたり被告から酒谷を保証人としていわゆる手形貸付をうけた。その過程で、原告は、酒谷の被告との取引にまぎれ込ませて、実際は原告が他から取得したいわゆる商業手形を被告のもとで割引いてもらつた(手形売買の性質をもつ割引をしてもらつた)ことが二、三回あつた。

昭和五六年九月七日ごろ以降、原告は、酒谷と関係なく、原告自身の所有する本件物件を担保に供して被告から金融を得る取引をすることとなつたが、その取引内容は、前記のとおり手形小切手の割引の形式による金銭消費貸借または手形小切手の売買であり、金銭消費貸借の場合は、被告において割引料名下に貸付日から弁済期日(右一覧表の弁済日欄記載の日)までの利息(同表弁済額(A)欄記載の金額と元金欄記載の金額との差額)を天引した金額を原告に交付して貸付け、原告において被告に交付した手形小切手を弁済期日に決済する方法によつて元利金を弁済することとされた。原被告間の取引が手形割引の形式をとりながら金銭消費貸借も含んでいることを示す事情として、原告が被告から「繰返し借入を為す」取引であることを明記した手形小切手割引契約書を取り交していること、原告が昭和五六年九月ごろ以降に被告から割引をうけた手形小切手はその当初から大部分が原告振出のものであるが、被告においても、最初から債務者の自己振出の手形小切手だけを持ち込まれた場合には通常その割引(売買)には応じないこと、右時期以降の原被告の取引は、それ以前の酒谷を保証人とした手形貸付の方法による取引をいわば継続したものであり、ただ右保証人に代えて本件物件を担保としただけが従前と変わつているだけであつて、とくに取引の形態を金銭消費貸借から手形小切手の売買に変える理由もないこと、金銭消費貸借による取引の場合には、被告は、保証人を徴することを原則としているが、本件については本件物件の担保力が十分であつたため、保証人を徴しなくてもよかつたこと、なお、昭和五八年一一月、同五九年七月に原被告が右契約を更新したさいには、右原則にしたがつて、原告の妻浜西美寿を保証人としていること、以上のような事実が挙げられる。

右契約に基づいて、原告は、被告から、右一覧表1ないし28、32、33のとおり、自己振出の手形または小切手の割引の形式により、被告から金員の貸付をうけ、手形小切手を決済して借受金債務を弁済してきた(ただし、一部未了)。

ただ、同表29、30、31の取引は、原告が自己振出の手形小切手の割引をうけたものではなく、原告において、第三者との商取引によりその第三者(29、30は奈良工機株式会社、31は兵庫ヤクルト販売株式会社)から取得したいわゆる商業手形を被告に割引いてもらつたものであり、その手形について原告が振出人またはいわゆる融通手形の振出をうけた者としての決済義務を負うものではなく(事実、右各第三者によつて決済されている。)、またその一部(おそらく31の手形)は原告がいつたん銀行で割引(売買)をうけようとして銀行と交渉したが、早急に現金化することができなかつたために被告のもとで割引をうけたものであることがはつきりしており、そして、原告自身も右29、30、31の手形割引は手形の売買にあたるように考えているのであつて、この29、30、31の取引は手形売買にあたるものである。

以上のとおり認められ、〈証拠〉中右認定と抵触する部分は措信しがたく、他に右認定を覆すに足りるほどのものはない。

三右一覧表1ないし31の手形小切手の全部と32のうちの上段三通の小切手(金額各二〇万円)が同表弁済日欄記載の日に決済されたことについては当事者間に争いがなく、これと右二の認定事実を合わせると、同表1ないし28、32(一部)の手形小切手については、振出人である原告がこれを決済し、これにより借受金の元利金債務を弁済したものであり、かつ29、30、31の手形は振出人である第三者においてこれを決済したものであることが、明らかである。

右表1ないし28、32、33の取引は右のとおり金銭消費貸借であるから、その利息について利息制限法の適用がある。この点につき、被告は、同法の制限利率を超えて支払つた利息部分について貸金業法四三条一項のいわゆるみなし弁済の規定が適用される旨を主張する。

〈証拠〉によれば、被告が貸金業者の登録をしたのは昭和五九年一月一〇日であることが認められるから、右規定の適用が問題となるのは、右一覧表16以降の取引に限られる。

ところで、被告は、各貸付につき原告のした手形小切手の決済による弁済について、被告から原告に対して直接、貸金業法一八条一項所定の受取証書を交付していないことは、これを自認するところである。もつとも、被告は、原告が銀行から支払済の認証をうけて返戻される手形小切手が右受取証書にあたると主張するが、返戻される手形小切手に右規定各号所定の記載があることを認めうる証拠もなく、その主張を採ることはできない。また被告は、右決済方法による弁済の場合には、同条二項により原告の請求のない限り、受取証書の交付を要しない旨を主張する。しかし、かりに右弁済が同条二項の場合に該当するとしても、同法四三条一項のみなし弁済の規定が適用されるためには、同法一八条一項所定の受取証書が交付されていなければならない。すなわち、同法一八条二項は、同項所定の場合に弁済者の請求のない限り貸金業者が受取証書を交付しなくても刑罰を課されないことを定めているにすぎず、受取証書の交付なしで同法四三条一項のみなし弁済の規定が適用されるとまで定めているものではなく、また同項二号は、同項のみなし弁済規定適用のための要件としての受取証書の交付について除外事由を一切定めていないのであり、さらに債務者は弁済直後に法定の要件を充たした受取証書の交付をうけてはじめて利息制限法の規定にしたがつて法律上本来支払わなくてよい債務の内容を具体的に認識計算できるのに、その機会を奪われたままで貸金業法四三条一項のみなし弁済の規定の適用をうけるのは、債務者に著しく不利で、同法の目的にもそわないからである。したがつて、被告の右主張も採用することができない。

そうすると、その余の点につき判断するまでもなく、本件の右金銭消費貸借について貸金業法四三条一項の規定は適用されず、利息制限法の制限を超えて支払われた利息は元本の弁済に充当されるか、過払いとして被告にとつて不当利得となるものである。

これによつて計算した結果は、まず、右一覧表1から28までは、その22、24、27、28を別紙一覧表(訂正分)のとおり訂正する(22は日数の誤り、24は制限利息の日割計算にあたり年間日数を22及び25以下と同様に三六五日とすべきところを三六六日としたことによる誤り、27は利息計算期間の日数の誤りに基づくものである。28は利息計算期間の終期を誤記しただけのもので、計算結果に影響はない。)ほかは、前記一覧表記載のとおりであつて、過払額(被告の不当利得額)は計二二一万九七〇七円となる。

次いで、右一覧表32の小切手三通の決済による計六〇万円の弁済のうち利息制限法の制限利率を超えて支払つた利息分を元本に充当して計算した結果、右32の貸金の残元金は一〇〇万四四三二円であり、これと最終内入弁済日の翌日の昭和六〇年五月一日から同月一七日まで同法の制限利率による利息は七〇一七円となる(右一覧表に一万二三八三円とあるのは誤り)が、これが未決済である。同表33の貸金は天引利息を控除した元本全部の一六九万六五一〇円とこれに対する貸付日の昭和六〇年三月三〇日から右同年五月一七日まで四九日分(同表に四八日とあるのは誤り)の制限利息三万四一六三円(同表に三万三四六五円とあるのは誤り)が未決済である。以上の合計二七四万二一二二円が右昭和六〇年五月一七日における原告の被告に対する決済未了の借受金債務の元利金合計額である(同表に二七四万六七九〇円とあるのは誤り)。

右一覧表29、30、31の取引は、前記のとおり手形の売買である(その各手形もこれを振出した第三者が決済している)から、その割引料を利息制限法にしたがつて計算すれば同法所定の制限利率を超えるものとなるとしても、同法の適用はなく(本件において同法を適用すべき特別の事情は、証拠を総合しても見出せない。)、したがつて原告のいう過払いも生じない。

以上により、右昭和六〇年五月一七日において、原告は被告に対し、不当利得返還請求債権二二一万九七〇七円を有し、一方借受金債務二七四万二一二二円(二七〇万〇九四二円が元金、四万一一八〇円が利息)を負担していたものということができる。

四原告が右同日被告に対して不当利得返還請求債権と借受金債務とを対当額で相殺する旨の意思表示をしたことは、当事者間に争いがない。右相殺の結果、原告は被告に対してなお借受金債務五二万二四一五円(全部元金)を残しているところ、原告は、三二万九四一四円を口頭で提供したものの被告に受領を拒絶された旨を主張するが、右弁済提供と受領拒絶の事実を認めるに足る証拠はないのみならず、かりに右金額の提供をしても右残債務額にかなり不足するので適法な弁済提供とならない。その後、同年七月二五日に原告が右三二万九四一四円を供託したことは当事者間に争いがないが、前記のとおり適法な弁済の提供と受領拒絶が認められないので、原告は、右供託した部分についても債務を免れることができない。

五以上のとおりであるから、原告の被告に対する借受金債務は、右五二万二四一五円とこれに対する昭和六〇年五月一八日から支払ずみまで利息制限法の制限利率の年一割五分の割合による利息ないし遅延損害金の限度でなお残存しているといわなければならない。右一覧表32、33の債務(すなわち別紙債務目録一、二の債務)のうち残存しているのは、右一覧表掲記の弁済期日の先後関係から同表32(すなわち右目録一)の債務の一部であるといえる。

また、原告が請求原因7のとおり原被告間の取引を解約告知し、根抵当権の確定請求をしたことは、記録に徴して明らかであるが、根抵当権その他担保権の被担保債務である右借受金債務がなお残存している以上、担保権も未だ消滅していないものである。

六そうすると、原告の本訴請求は、被告との間で別紙債務目録記載の債務のうちその一の債務五二万二四一五円とこれに対する昭和六〇年五月一八日から支払ずみまで年一割五分の割合による利息ないし損害金をこえて存在しないことの確認を求める限度で理由があるから認容し、その余の債務不存在確認請求及び本件各登記抹消登記手続請求は失当であるから棄却することとし、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九二条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 岨野悌介)

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